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突然の骨折、「このまま歩けなくなるの?」という不安に寄り添って
ご高齢のお母さまが大腿骨頸部骨折で入院され、「リハビリはいつから?」「寝たきりにならない?」と気がかりな方は多いはずです。この記事では、早期リハビリが推奨される理由や開始時期の目安、退院後の通院リハビリと骨粗鬆症治療を並行する考え方を、整形外科の視点でわかりやすくお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 状態が安定していれば術後早期から離床を進めることが、合併症予防や生活の自立度維持につながると考えられています
- リハビリは急性期・回復期・維持期と段階的に進み、禁忌肢位への配慮も大切にされます
- 退院後は骨密度検査や骨粗鬆症治療とリハビリを並行し、再骨折予防に取り組むことがすすめられます
高齢者の大腿骨頸部骨折で「早期リハビリ」が推奨される医学的メリット
手術の直後から体を動かすことに、不安を感じる方は少なくありません。それでもご高齢の患者さまでは、できるだけ早い段階から体を起こす「早期離床」が推奨されています3。その理由を、合併症の予防と筋力という2つの視点から見ていきましょう。
早期離床が予防する4つの重篤な合併症(血栓症・肺炎・褥瘡・認知機能低下)
ベッド上での安静が長引くと、いくつかの合併症が生じやすくなると考えられています。代表的なのが次の4つです。
- 深部静脈血栓症:脚の血流が滞り、血の塊ができやすくなります
- 肺炎:長く横になることで痰が出しにくくなり、呼吸器の負担が増すことがあります
- 褥瘡(床ずれ):同じ姿勢が続くことで皮膚に負担がかかります
- 認知機能の低下:刺激の少ない環境が続くと、意欲や見当識に影響することがあります
術後早期から体を起こし、座る・立つといった動作を取り入れることは、こうした合併症の予防につながると報告されています1。安静のしすぎがかえって回復の妨げになる場合もある、という点はぜひ知っておきたいところです。
リハビリ開始の遅れが及ぼす「寝たきり」への影響と筋力低下のスピード
ご高齢の方は、寝たきりの状態が続くと筋肉量が短期間で落ちやすいことが知られています。一度失われた筋力を高齢の患者さまが取り戻すには、時間も労力もかかると考えられています3。
だからこそ、可能な範囲でリハビリを早めに始め、日常生活の自立度(ADL)を保つことが大切だとされています。早期からのリハビリは、元の生活へ戻るための土台づくりといえるでしょう。焦らず、それでいて止まらずに、その方の状態に合わせて段階的に進めていくのが基本です2。
大腿骨頸部骨折リハビリの開始時期と回復に向けた3つのステップ
リハビリは、患者さまの回復状態に合わせて「急性期・回復期・維持期」と段階的に進んでいきます3。ここでは、時期ごとの目安と注意点を見ていきましょう。
【急性期】手術翌日から始まる起立・関節可動域訓練の目安
「手術の翌日から動いて大丈夫なの?」と驚かれる方もいますが、状態が安定していれば術後翌日ごろから、ベッドサイドでの起き上がりや平行棒につかまっての起立訓練を始めるのが一般的です1。あわせて、関節が固まらないよう、無理のない範囲で動かす関節可動域訓練も行います。もちろん、痛みや全身状態を確かめながら、担当医と理学療法士が慎重に進めていきます。
【回復期・維持期】歩行訓練と日常生活の安全な動作(禁忌肢位の回避)
回復期に入ると、歩行器や杖を使った本格的な歩行訓練へ移ります。大腿四頭筋や中殿筋など、歩行を支える筋肉の強化も並行して進めます。
この時期に大切なのが、股関節に負担をかける禁忌肢位(避けたい姿勢)への注意です。深くしゃがむ、脚を強く内側にひねる、床のものを無理に拾う——こうした動作は控えるよう指導されることがあります。靴の履き方やトイレ・入浴時の体の使い方も、安全な方法を少しずつ身につけていきましょう。
【認知症合併例】認知症がある場合の進め方とご家族のサポート方法
ご高齢の患者さまでは、認知症を合併しているケースも少なくありません。指示の理解が難しい場合でも、短く具体的な声かけや、なじみのある動作から取り入れる工夫でリハビリを進めていきます。
ご家族には、「見守る」ことと「手を出す」ことのバランスが求められます。すべてを手伝うのではなく、できることは本人に任せ、笑顔で穏やかに励ますことが安心につながります。不安を与えない声かけを、ぜひ心がけていただければと思います。
急性期病院からの退院と地元の整形外科クリニックへのスムーズな移行

急性期病院には入院期間の目安があり、退院の時期が近づくと「その後どこでリハビリを続けよう」と気がかりになる方が多いものです。自宅へ戻りながらリハビリを続けるには、事前の準備と地域の連携が鍵になります。
デイケア・訪問リハビリ開始のためのケアマネジャーとの連携と申請の流れ
退院後に通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリを利用するには、介護保険サービスの手続きが必要です。おおまかな流れは次のとおりです。
1. お住まいの市区町村へ要介護認定を申請する
2. 認定調査・主治医意見書をもとに介護度が決まる
3. ケアマネジャーとケアプランを作成する
4. デイケアや訪問リハビリなどのサービスを開始する
入院中から病院の医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーへ早めに相談しておくと、退院後の移行がスムーズになりやすいです1。
リハビリ・入院に伴う医療費の不安を解消する高額療養費制度と介護保険の併用
手術やリハビリ継続にかかる費用も、大きな気がかりのひとつでしょう。医療費が一定額を超えた場合には、高額療養費制度によって自己負担が軽減される仕組みがあります。所得区分によって上限額が異なるので、加入先の窓口で確認しておくと安心です。
また、退院後のリハビリは医療保険と介護保険を状況に応じて使い分けます。制度の詳細は変わることもあるため、ケアマネジャーや医療機関の窓口へ相談し、ご家庭に合った組み合わせを整えていきましょう。
再骨折を防ぐ!骨粗鬆症治療と並行したリハビリの重要性
大腿骨頸部骨折の背景には、骨がもろくなる骨粗鬆症が関わっていることが少なくありません。歩行能力の回復と同時に、再転倒による反対側の骨折を防ぐ取り組みが大切になります2。
骨密度測定(DEXA法)による精密検査と適切な薬物療法の併用
骨の状態を正確に把握するには、全身の骨密度を精密に測定できるDEXA法(デキサ法)による検査が用いられます。その結果をもとに、骨を強く保つための薬物療法や、カルシウム・ビタミンDを意識した食事、適度な運動を組み合わせていきます1。リハビリで筋力を取り戻しながら骨の治療も並行することが、再骨折の予防という観点から大切だと考えられています。
山陽小野田市の瀬戸整形外科クリニックによる退院後のシームレスなサポート
当院では、骨密度測定装置(DEXA)をはじめとする設備を備え、退院後の運動器リハビリと骨粗鬆症の継続治療を、地域に根ざしてサポートしています。院長は日本整形外科学会 整形外科専門医であり、リハビリテーション専門医でもあります。
山口県山陽小野田市にある当院は、JR小野田線「南中川駅」より徒歩5分、バス停「千代町」からすぐの立地です。急性期病院からの退院後、通いやすい環境でリハビリと骨の治療を続けたいとお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。歩く力を保ち、再骨折を防ぐための道のりを、地域のかかりつけ医として一緒に歩んでいきます。
よくある質問
Q. 手術の翌日からリハビリを始めても、母の体に負担が大きすぎませんか?
A. 全身状態や痛みを担当医と理学療法士が確認しながら、無理のない範囲で少しずつ進めます。早期に体を起こすことは合併症の予防につながると考えられており、状態に応じて調整していきますのでご安心ください。
Q. 高齢でも、元のように歩けるようになりますか?
A. 回復の程度は、年齢や骨折の状態、もともとの生活状況によって個人差があります。一律の見通しをお約束することはできませんが、早期からのリハビリと継続的な取り組みが、生活の自立度を保つ土台になると考えられています。
Q. リハビリ中に痛みが強くて動きにくいときは、どうすればよいですか?
A. 我慢して続けるのではなく、担当のスタッフへ痛みの程度をお伝えください。運動の内容や強度を見直したり、痛みへの対処を検討したりして、進め方を調整します。
Q. 退院後、家での転倒予防で気をつけることはありますか?
A. 床の段差や滑りやすいマット、コード類を整理し、手すりの設置を検討しましょう。夜間の照明や、無理な姿勢を避ける動作の工夫も大切です。福祉用具の相談も有効です。
Q. 骨密度の検査は、リハビリを受けている途中でも受けられますか?
A. はい、リハビリと並行して骨密度の検査や骨粗鬆症の治療を進めることは可能です。再骨折の予防という観点からも、両方を並行して行うことがすすめられます。
参考文献
1. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
2. 公益社団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/
3. 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 https://www.jarm.or.jp/
山口大学医学部 卒業
山口大学医学部付属病院 卒後臨床研修
2005年
山口労災病院
2006年
山口大学医学部付属病院整形外科学講座へ入局
2007年
山口県立総合医療センター レジデント
2009年
周東総合病院
2012年
山口大学医学部 臨床助教
2014年
山口県立総合医療センター 整形外科 部長
2017年
瀬戸病院 副院長
2020年
瀬戸整形外科クリニック 院長
2022年
山陽小野田医師会 理事
日本整形外科学会 認定リウマチ医
日本リハビリテーション学会 リハビリテーション専門医
日本手外科学会 手外科専門医
日本プライマリ・ケア学会 認定医・指導医
国際マッケンジー協会認定セラピスト
日本スポーツ協会 スポーツドクター
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