
痛みを抑えることとけがの診断は別と捉え、早めの受診を
交通事故のあとの痛みを湿布や市販薬でやわらげても、けがの原因を確かめたことにはならないため、早めに整形外科で体の状態をみてもらう必要があります。 この記事では、あとから出た痛みやしびれを受診の目安にする理由と、持病の薬や痛み止めを一緒に使う前に確かめたいことをまとめます。あわせて、診察で伝えたい仕事や運転のときの動き、検査やリハビリの進め方もお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 事故のすぐあとに歩けても、あとから痛みやしびれが出ることがある。湿布や市販薬でやわらいでも原因を確かめたことにはならないため、早めに整形外科へ相談する。
- 手足が動かしにくい、急に力が入らない、強い頭痛や吐き気があるときは救急の受診を考える。薬を一緒に使うときは、成分や持病、ふだんの薬を見て医師や薬剤師に相談する。
- 診察では症状のうつり変わりや使った薬、仕事や運転で困る動きを伝え、検査や薬、リハビリを体の状態に合わせて相談する。
事故後に湿布や市販薬で様子を見る自己判断のリスクと、受診を急ぐ症状

事故直後に歩けても、翌日以降の痛みやしびれは相談を
事故の直後に自分の足で歩けたとしても、翌日以降に現れた首や肩の痛み、手の違和感は受診を決める大切な判断材料です。受傷した瞬間は強い緊張や興奮によって、痛みを自覚しにくい時間帯があるとされています。
当院では、大きな事故でいくつもの骨が折れた方から、追突や自転車の事故にあった方まで、さまざまなご相談を受けています。事故の次の日よりあとに出てきた痛みやしびれにも対応しています。仕事やふだんの疲れのせいと決めつけず、あとから出てきた不調も遠慮なくご相談ください。
湿布や市販薬では代わりにならない、診察と必要に応じた画像検査
湿布や市販薬で一時的に痛みが軽くなることと、骨や筋肉、神経にどのような損傷があるかを確かめることは別の問題です。湿布や市販薬は、原因となるけがの診断や治療の代わりにはなりません。
薬で痛みが隠れると、出血や腫れなどの変化を見極めにくくなります。当院では初診時に医師が診察を行います。症状に応じてレントゲン撮影(SHIMAZU RAD SpeedProなど)や超音波検査(GE Versana Premierなど)を実施して身体の状態を確認しています。 また、医師の診断を受けていないと、その後の治療費や損害賠償金の請求に支障が出る場合があることもお伝えしています。
手足のしびれ・力の入りにくさなど、救急受診を考える症状の目安
手足が動かしにくい、急にようすが変わったなどのときは、ふだんの外来を待たずに救急の受診を考えてください。頭を打ったときは、頭の中の出血などが、あとになって症状として出てくることもあります。
| 受診先の目安 | 主な症状の例 |
|---|---|
| 救急要請・救急外来を検討 | 意識がぼんやりする、強い頭痛や繰り返す吐き気、片側の手足の麻痺、急に強まるしびれや脱力、息苦しさ、急激な腫れ |
| 早めに整形外科へ相談 | 翌日以降に出た首・肩・腰の痛み、動かしたときの違和感、工具を持つ際の手のしびれや力の入りにくさ |
表の救急目安に当てはまらない首や肩の痛み、手の違和感であっても、様子を見続けず早めに整形外科を受診して原因を確かめましょう。
ポイント
事故直後に歩けたことや薬で痛みが和らいだことを理由に受診を先延ばしにせず、後から出た症状も医師の診察で確認することが大切です。
湿布と市販の鎮痛薬、高血圧の薬を併用する前に確かめたいこと
湿布と飲み薬で成分が重なっていないか、使用量と間隔の見方
自宅にある湿布と市販の飲み薬を一緒に使う前には、両方に同じ系統の鎮痛成分が含まれていないかを確かめる必要があります。貼り薬は飲み薬に比べて全身への影響は少なめと報告されていますが 1、内服薬との併用や一度に多くの枚数を貼ることで成分が重なる場合があります。
外箱や添付文書に記載された成分名、1日の使用量、使う間隔を必ず確認してください。貼り薬と飲み薬で同じ系統の成分を重ねて使ってしまうこともあるため、判断に迷うときは使用前に薬剤師へ相談しましょう。
高血圧などの持病や処方薬があるときは、追加する前に相談を
高血圧の薬を飲んでいる方や、腎臓の病気がある方は、痛み止めの選び方に気をつける必要があります。体の水分が足りないときに一部の血圧の薬や痛み止めを使うと、腎臓のはたらきが大きく落ちることがあります 2。
薬を選ぶときは、得られる作用だけでなく、副作用やほかの選び方も前もって知っておくことが大切です。手元の市販薬を自己判断で追加したり量を増やしたりせず、処方医や薬剤師へ現在の服薬状況を伝えて相談してください。
薬を否定するのではなく、診断に基づいて初期の痛みを抑える
私は整形外科医として、強い痛みが続くと痛みが慢性的になりやすいと感じています。そのため、湿布や鎮痛薬を使うこと自体を否定しているわけではありません。
当院では、事故後の初期には鎮痛薬や漢方薬、湿布、トリガーポイント注射などの注射、コルセットなどの装具を症状に応じて組み合わせ、強い痛みを早期に抑えるようにしています。 また、ハイドロリリース(筋膜リリース)注射は、超音波で見ながら筋膜の間に薬液を注入し、滑りをよくすることを目指す処置です。注射のあとは、針を刺したところに内出血が出たり、まれに感染や薬へのアレルギーが起きたりすることがあります。注意したいのは薬の使用そのものではなく、医師の診断を受けないまま市販薬で痛みを抑えて受診を先延ばしにすることです。
ポイント
市販の薬を足したり、いっしょに使ったりする前に、持病やいま飲んでいる薬との組み合わせを薬剤師や医師にたずねましょう。診察を受けたうえで、はじめの痛みに合った薬に切り替えることが大切です。
受診後は症状と仕事・運転の負荷に合わせて、治療とリハビリを相談する
強い痛みやしびれが続くときは、追加の検査も検討する
手の違和感や強い痛みが続く場合、薬を増やすだけで済ませず、首の骨や椎間板、神経の状態をさらに詳しく調べる必要があります。当院では、むち打ち症で強い痛みが続く、症状が長引く、しびれなどの神経症状がある場合は、脱臼・不全骨折・外傷性頸椎椎間板ヘルニアなども念頭に置きます。そのうえで、必要に応じてレントゲンストレス撮影を検討し、提携病院でMRIを撮影します。
検査は一律に行うのではなく、その時点の症状に応じて判断しています。初回の画像検査で異常を指摘されなかった場合や、受診後にしびれなどの症状が変化した場合も、我慢せず改めて医師へご相談ください。
診断後は薬だけでなく、症状に応じてリハビリを組み合わせる
鎮痛薬は急性の痛みを和らげる手段の一つですが 1、当院では「治療の主役はリハビリテーション」と考え、治療期間中も快適に生活できるよう心がけています。当院では診断結果を踏まえて治療とリハビリを提案し、マイクロ波、超音波、低周波による物理療法に、理学療法士によるストレッチ、姿勢・体操指導を組み合わせます。
なお、リハビリでは翌日以降の筋肉痛やだるさ、注射では針を刺したところの痛みや内出血などが一時的に生じる場合があるため、体調の変化を確認しながら負荷を調整していきます。
工具作業や運転で困る動作も、診察時に伝える
人体は骨や関節が重力に逆らいながら動いているため、日常の作業姿勢が痛みに影響することがあります。当院では、作業環境などによる力学的な負荷が症状に関わる場合、姿勢矯正、生活指導、運動指導によって身体にかかる負荷を変えることを重視しています。
工具を握ると右手に違和感が出る、上を向いて点検作業をすると首が痛む、運転中にハンドルを切る・後方確認をするのがつらいなど、困っている具体的な動作を診察時にお伝えください。症状がある間に作業や運転を控えるかどうかも、業務内容を共有したうえで医師と相談して判断しましょう。
受診時に持参したい薬の情報と通院について
はじめての受診では、次のことをメモや現物で持っていくと、診察が進めやすくなります。
- 事故の日にちと時間、そのときのようす(ぶつかった向きや強さ)
- 症状が出た日と、そのあとの変わり方
- 使った湿布・市販薬の名前と回数
- 飲んでいる高血圧の薬などが分かるお薬手帳
交通事故でかかる費用は、自賠責保険や任意保険でまかなうことが多いです。届け出をすれば、健康保険を使えることもあります。当院は第2・第3駐車場を使えるので、車で通い続けることもできます。道順などくわしくはアクセスページをご覧いただき、症状や診断書、保険会社とのやりとりの不安もふくめてご相談ください。
よくある質問
Q1. 追突事故から数日経って受診しても、警察提出用の診断書は作成してもらえますか?
A. 事故の次の日よりあとに痛みが出ることはめずらしくなく、当院でも診察と検査をしたうえで診断書をつくっています。ただし、事故から日にちがたちすぎると、事故と症状のつながりを説明しにくくなります。違和感に気づいたら、早めに受診してください。
Q2. 骨折やむちうちの後に吐き気や頭痛がするのはなぜですか?
A. 首の炎症や筋肉のこわばりが自律神経に影響したり、頭を打ったことで頭の中に変化が起きたりして、吐き気や頭痛が出ることがあると考えられています。繰り返す吐き気や日ごとに強まる頭痛、手足の動かしにくさを伴うときは、速やかに医療機関を受診してください。
Q3. 整形外科のリハビリは週に何回くらい通うのが目安ですか?
A. 痛みが強い初めのころは週に数回通い、落ち着いてきたら間隔をあけていくことが多いです。実際の回数は、炎症の強さや痛みの段階、お仕事や送迎などの生活スケジュールによって変わるため、理学療法士との運動器リハビリの間隔を医師と相談しながら決めていきます。
Q4. 通院中に高齢の家族の送迎や介護で身体に負担がかかる場合はどうすればよいですか?
A. 家族の送り迎えや手助けで前かがみになるなど、毎日さけられない動きがあるときは、診察のときに医師や理学療法士へお伝えください。当院では体にかかる負担を軽くするため、動き方や姿勢の工夫もふくめた生活の指導を行っています。
参考文献
当院では、市販の湿布の使用について説明する際、院内のYouTube動画の台本「【市販の湿布】整形外科医はこれを使います!」の内容を取り入れています。説明においては、湿布が向いている痛みの種類(打撲や捻挫、関節の痛みなど骨・関節・筋肉からくる痛み)の整理や、痛み・炎症を抑える成分および血の流れを良くする成分の確認、はがれにくさや貼り心地といった選び方の視点、皮膚のかぶれを防ぐための貼り方の注意点などを伝えています。
1. Derry S, Moore RA, Gaskell H et al. Topical NSAIDs for acute musculoskeletal pain in adults. The Cochrane database of systematic reviews. 2015. PMID: 26068955 / DOI: 10.1002/14651858.CD007402.pub3
2. 連携NEWS「慢性腎臓病(CKD)」 | 横浜市立大学附属 市民総合医療センター. https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/medical/medicalnews/CKD.html
3. 日本医科大学武蔵小杉病院「糖尿病性足病変【症状と診断、フットケア】」 https://www.nms.ac.jp/kosugi-h/section/plastic-surgery/plastic-surgery_copy_copy_2_copy_copy_copy_2_copy.html
4. 厚生労働省「確認してください!美容医療の施術を受ける前にもう一度!」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04978.html
5. Miroshnychenko A, Ibrahim S, Azab M et al. Acute Postoperative Pain Due to Dental Extraction in the Adult Population: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Journal of dental research. 2023. PMID: 36631957 / DOI: 10.1177/00220345221139230
山口大学医学部 卒業
山口大学医学部付属病院 卒後臨床研修
2005年
山口労災病院
2006年
山口大学医学部付属病院整形外科学講座へ入局
2007年
山口県立総合医療センター レジデント
2009年
周東総合病院
2012年
山口大学医学部 臨床助教
2014年
山口県立総合医療センター 整形外科 部長
2017年
瀬戸病院 副院長
2020年
瀬戸整形外科クリニック 院長
2022年
山陽小野田医師会 理事
日本整形外科学会 認定リウマチ医
日本リハビリテーション学会 リハビリテーション専門医
日本手外科学会 手外科専門医
日本プライマリ・ケア学会 認定医・指導医
国際マッケンジー協会認定セラピスト
日本スポーツ協会 スポーツドクター
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