
検査で異常がないのに、頭痛とめまいが続くとき
追突から1〜2ヶ月。首の違和感だけだったはずが、今になって頭が重い、ふらつく、吐き気が抜けない。レントゲンもCTも異常なしと言われ、周囲には伝わりにくい——そんな状況の方へ、画像に写りにくい体の変化と、次に相談すべき診療科の考え方を整理します。
この記事の要点まとめ
- 画像検査で異常がなくても、筋肉の緊張や自律神経の乱れなどが症状に関わることがあります。
- 首の痛みやめまいなど、症状の中心に合わせて整形外科や耳鼻咽喉科などへの受診を検討できます。
- 日常生活の支障や経過を記録し、通院継続の判断を含めて医師に相談することが役立ちます。
レントゲンやCTで「異常なし」と言われる医学的な理由

「異常なし」という言葉は、実際には「その検査で調べられる範囲に問題は見つからなかった」という意味合いで使われています。検査ごとに得意分野が違うことを知っておくと、結果の受け止め方が変わってきます。
レントゲン・CT・MRIそれぞれで確認できる範囲の違い
レントゲンは骨の並びや骨折の有無を確認するもので、筋肉や靭帯といった軟らかい組織はほとんど写りません。CTは頭蓋内の出血や骨折をすばやく調べる目的で使われ、脳の実質に目立った損傷がなければ「異常なし」となります。MRIは軟部組織や神経の評価に向きますが、それでも顕微鏡レベルの変化までは描出されません。つまり、画像検査は「重い病変を見落とさないため」の道具であり、症状のすべてを説明するためのものではないという前提があります。
むちうち・頚椎捻挫で起こる目に見えない組織の変化
追突の衝撃で首がしなると、頚椎まわりの筋肉や靭帯、関節包に細かな負担がかかります。これらは炎症や筋緊張という形で残ることがあり、画像では判別しにくい領域です。外傷後の頭痛について脳血流や神経の伝達、白質の微細構造など複数の側面から検討した研究報告もありますが、単一の画像所見で説明できるものではないと整理されています2。
自律神経の乱れが頭痛・めまい・吐き気を引き起こす仕組み
首の後ろ側には、血管や内臓の働きを調整する交感神経が走っています。頚部の筋緊張が続くとこの調整がうまくいかず、頭痛・ふらつき・吐き気・耳鳴りといった一見バラバラな症状が同時に出ることがあります。天候や疲労で日ごとに波があるのも、この経路が関わる症状の特徴として説明されることが多い点です。
事故後の原因不明な症状で疑われる代表的な状態

画像所見が乏しくても、医学的に名前のついた状態がいくつか知られています。病名を知ること自体が目的ではありませんが、医師に症状を伝える際の手がかりになります。
バレ・リュー症候群や頸性神経筋症候群とは
頚椎捻挫のあとに、頭痛・めまい・耳鳴り・眼精疲労・全身のだるさなどが重なって続く状態は、古くからバレ・リュー症候群(後部頚交感神経症候群)として報告されてきました。頚部の交感神経が関わると考えられていますが、成因については諸説あります。また、首の深部の筋肉のこわばりが自律神経の働きに影響するという考え方から、頸性神経筋症候群という概念が提唱されることもあります。いずれも画像で確定するタイプの診断ではなく、経過と症状の組み合わせで検討されます。
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の可能性
事故の衝撃で脳や脊髄を包む膜に負担がかかり、髄液が漏れることで頭痛や倦怠感が生じる状態が知られています。特徴として挙げられるのが、起き上がると頭痛が強まり、横になると和らぐという姿勢による変化です。この傾向が目立つ場合は、その旨を診察時にはっきり伝えておくと、必要に応じた追加検査の検討につながります。診断には専用の画像検査や基準があり、すべての事故後頭痛が当てはまるわけではありません。
内耳の働きの乱れによるふらつき・耳鳴りとの関連
めまいの背景には、平衡感覚をつかさどる内耳の関与が考えられる場合もあります。回転性か、ふわふわ浮くような感じか、耳鳴りや聞こえにくさを伴うか——こうした情報は、耳鼻咽喉科領域の評価が必要かどうかを見極める材料になります。首由来か内耳由来かの切り分けは自己判断が難しいため、両方の可能性を念頭に置いた相談が現実的です。
「異常なし」についての誤解を整理する
検査結果の紙に大きな異常が書かれていないことで、かえって行き場をなくしてしまう方は少なくありません。ここで一度、言葉の意味を切り分けておきます。
「異常なし」は「原因がない」という意味ではない
医療現場で使われる「異常なし」は、骨折・出血・腫瘍といった緊急性の高い病変が確認されなかったことを指す場合がほとんどです。症状が存在しないという判定ではありません。 気のせいだと自分を責める必要はなく、むしろ「どの検査で何を除外できたのか」を医師に確認しておくと、次の一手が見えやすくなります。
症状の重さと検査結果が一致しないケースがある
画像上の変化が小さくても日常生活への支障が大きい方もいれば、その逆もあります。事故後の症状は、痛みの信号の伝わり方、睡眠の質、不安による筋緊張など複数の要素が絡むため、一枚の画像と一対一で対応しないのが実情です。家事や仕事でどの動作がつらいか、具体的に書き出して持参すると診察の精度が上がります。
軽い有酸素運動など回復を支える取り組みに関する研究
外傷後の症状に対し、完全な安静を続けるより無理のない範囲で体を動かす方法が検討されており、軽い有酸素運動の安全性や継続しやすさを調べた小規模な臨床研究も報告されています4。ただし、めまいや吐き気が強い時期に自己判断で運動量を増やすのは避けたいところです。何をどの程度行うかは、症状の段階を診てもらったうえで相談してください。
治療やリハビリで起こりうる副作用・リスク
事故後に行われる治療やリハビリにも、次のような副作用やリスクが起こることがあります。
- 運動療法・リハビリ:翌日以降の痛みやだるさの増強、筋肉痛、めまいや吐き気の一時的な悪化
- 注射(局所麻酔薬を用いた処置など):注射した部位の痛み、発赤、腫れ、内出血、まれに感染や神経症状
- 内服薬:胃の不快感・吐き気、眠気、ふらつき、発疹やかゆみなどの皮膚症状
- 湿布・外用薬:貼った部位のかぶれ、かゆみ、色素沈着
いずれも症状の程度や体質によって現れ方が異なります。気になる変化があったときは自己判断で続けず、担当の医師にお伝えください。
今の症状に応じてどの診療科を受診すべきか
「たらい回しにされている」と感じるときほど、症状の中心がどこにあるかを言語化しておくと、受診先の判断がしやすくなります。
首の痛みや動かしにくさが中心なら整形外科
振り向きにくい、上を向くと頭が重くなる、肩から背中にかけて張るといった訴えが強い場合は、頚椎とその周囲の評価が出発点になります。整形外科では、レントゲンに加えて超音波診断装置(エコー)を用い、レントゲンでは見えにくい筋肉や腱などの軟らかい組織の状態を、体位を変えながら確認することがあります。どのような検査を行うかは医療機関によって異なります。
めまい・耳鳴りが強い場合は耳鼻咽喉科との連携
ぐるぐる回る感覚、片耳の聞こえにくさ、耳が詰まる感じが目立つときは、内耳の評価が加わることで整理が進む場合があります1。整形外科と耳鼻咽喉科のどちらか一方で完結させようとせず、症状ごとに担当を分けて並行して診てもらうという発想が役立ちます。
頭痛が主体で長引く場合は脳神経外科・頭痛外来
頭痛の頻度や強さが中心的な悩みで、市販薬を飲む日が増えているなら、頭痛を専門に扱う外来での相談が選択肢になります。薬を使う回数が多くなること自体が頭痛の管理を難しくする場合もあるため、服薬記録を残しておくと話が早く進みます。
複数科を回っても改善しない場合の考え方
複数の科で検査を受けても説明がつかない状態が続くときは、これまでの検査結果を一式そろえて別の医師の意見を聞く、いわゆるセカンドオピニオンを検討する段階です。紹介状と画像データ、症状の経過メモの3点をまとめて持参すると、同じ検査を繰り返さずに済む場合があります。
症状固定を打診されたときの通院継続の考え方
保険会社から治療終了の話が出ると、「もう通ってはいけないのか」と受け取ってしまいがちです。治療を続けるかどうかは、本来は症状の経過をもとに医学的に判断される事柄です。
通院を続けるかどうかを自己判断する前に確認したいこと
症状が横ばいなのか、日によって波がありながらも変化しているのか。台所仕事で下を向くのがつらい、子どもの送り迎えで運転すると夕方に頭痛が出る——こうした生活場面での支障を具体的に整理してから、主治医に現状を伝えてください。打ち切りの連絡を受けた事実も、そのまま医師に共有して構いません。
通院実績やカルテの記録が後々の判断材料になる理由
症状の経過は、そのつど診察を受けて記録に残しておくことで、後から振り返りやすくなります。 受診の間隔が大きく空いたり、症状の訴えが記載されていなかったりすると、後から経過をたどるのが難しくなります。頭痛の頻度、めまいの出方、吐き気の強さを簡単なメモにして毎回渡すのも一つの方法です。
山口県山陽小野田市で相談先を探す際の視点
事故後の通院は数ヶ月単位になることもあり、仕事や子育ての合間に通える距離かどうかが継続を左右します。山口県のように車移動が中心の地域では、駐車場の台数や予約の取りやすさも実際的な判断材料です。通いやすさや予約のしやすさは医療機関ごとに異なるため、事前に確認しておくと安心です。判断に迷う段階でこそ、医療機関で現状を整理しておくことも一つの方法です。
よくある質問
Q. メニエール病は事故につながりますか?
A. メニエール病は内耳のリンパ液の状態が関わるとされる疾患で、外傷との関係が直ちに認められるものではありません。ただし事故後に回転性のめまいや難聴、耳鳴りが出た場合、内耳由来かどうかの評価が必要になることはあります。耳の症状が目立つときは耳鼻咽喉科での相談をご検討ください。
Q. むちうちによるめまいはいつまで続きますか?
A. 経過には個人差が大きく、数週間で落ち着く方もいれば数ヶ月単位で波が続く方もいます。期間を一律に示すことはできません。症状の出方が変わってきたか、生活のどこに支障が残っているかを記録し、診察のたびに共有していただくのが現実的です。
Q. めまいと吐き気と頭痛がずっと続くのはなぜですか?
A. 頚部の筋緊張、自律神経の働きの乱れ、睡眠不足や不安による影響などが重なると、複数の症状が同時に長引くことがあります。原因が一つに絞れないケースも多いため、症状の中心がどこにあるかを整理したうえで受診先を検討してください。
Q. 自律神経の乱れではどのような症状がみられますか?
A. 頭痛やめまい、吐き気のほか、動悸、発汗の異常、手足の冷え、倦怠感、寝つきの悪さなどが挙げられます。日によって強さが変わるのも特徴とされます。日常生活に支障が出ている場合は、症状の記録を持参して医療機関にご相談ください。
Q. 検査費用や治療費はどのくらいかかりますか?
A. 交通事故による受診は自賠責保険などが適用される場合が多く、自己負担の扱いは状況により異なります。実際の費用は医療機関により異なるため、受診前に窓口でご確認ください。
参考文献
1. Fan F, Anderson V, Morawakage T, et al. Post-traumatic headache pathophysiology in paediatric concussion: A systematic review. Neuroscience and Biobehavioral Reviews. 2024. PMID: 38043751 / DOI: 10.1016/j.neubiorev.2023.105498
2. Wang ZN, Ding JR, Li X, et al. Acupuncture Improves MRI Brain Microstructure with Postconcussion Symptoms in Mild TBI: A Randomized Controlled Trial. Radiology. 2025. PMID: 40693935 / DOI: 10.1148/radiol.250315
3. Snyder AR, Greif SM, Clugston JR, et al. The Effect of Aerobic Exercise on Concussion Recovery: A Pilot Clinical Trial. Journal of the International Neuropsychological Society. 2021. PMID: 34548116 / DOI: 10.1017/S1355617721000886
山口大学医学部 卒業
山口大学医学部付属病院 卒後臨床研修
2005年
山口労災病院
2006年
山口大学医学部付属病院整形外科学講座へ入局
2007年
山口県立総合医療センター レジデント
2009年
周東総合病院
2012年
山口大学医学部 臨床助教
2014年
山口県立総合医療センター 整形外科 部長
2017年
瀬戸病院 副院長
2020年
瀬戸整形外科クリニック 院長
2022年
山陽小野田医師会 理事
日本整形外科学会 認定リウマチ医
日本リハビリテーション学会 リハビリテーション専門医
日本手外科学会 手外科専門医
日本プライマリ・ケア学会 認定医・指導医
国際マッケンジー協会認定セラピスト
日本スポーツ協会 スポーツドクター
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