「肩が痛くて動かない。服の脱ぎ着が難しい」
「就寝時、寝がえりすると肩が痛くて目が覚めてしまう」
このような症状の方は、「五十肩(凍結肩)」の可能性があります。
五十肩は治りが悪く、治るのに半年以上かかることも多いのですが、
難治性の五十肩に対し約10年前より「サイレントマニピュレーション」という優れた治療が普及し、治療期間を劇的に短縮できるようになりました。
今回のブログでは、この新しい治療について解説します
目次
■サイレントマニピュレーションとは?
「麻酔をかけ無痛状態で、医師が肩を動かし動きと痛みを改善させる」手技です。
伝達麻酔下に行いますので、痛みはありません。外来で行い、院内滞在時間はおよそ1時間半、当日の費用負担は健康保険3割負担でおよそ7,000円です(令和4年3月時点)。
翌日から、多くの方が肩の動きや痛みが劇的に改善する事が多い画期的な治療です。
■対象となる患者様は?
五十肩の中でも、「凍結肩(明らかな原因なく発生する特発性肩関節拘縮)の拘縮期」の患者様に行います。
診察・レントゲン検査・超音波検査を行い、他の疾患を否定して「凍結肩」と診断します。
初期(炎症期)には薬や湿布、注射、リハビリテーションの治療を行います。これで症状が改善する方も多いですが、症状がなかなか良くならない場合に「サイレントマニピュレーション」をお勧めしています。
骨粗しょう症の方は骨折のリスクがありますので、行っておりません。
■治療の実際の流れ
◎麻酔
合併症予防のため、点滴を確保します。横向きに寝て頂き、超音波画像を見ながら、鎖骨部から伝達麻酔を行います。
注射の痛みは点滴をとる程度の軽いものです。麻酔が効き、全く痛みがなくなるまで約20分、ベッドで休んで頂きます。
◎マニピュレーション
仰向けに寝て頂き、徒手的に肩を動かします。途中、コクコクッとこわばりの外れる音がしますが、心配はいりません。肩関節に痛み止めを注射し、三角巾で固定してご帰宅頂きます。麻酔は約半日続き、その間手が動きませんが、翌朝には動くようになります。
◎リハビリテーション
良い動きを得て、さらに維持する為、理学療法士による週2回程度のリハビリテーションを、2か月程度行います。
■サイレントマニピュレーションで生じうる合併症について
◎麻酔により起こりうる合併症
・片目の充血やまぶしさ:約20%に生じ、2時間程度で治ります
・局所麻酔薬中毒:稀な合併症ですが、生じた際には適切な対応が必要です。酸素や脂肪乳製剤の点滴を準備し備えています。
◎マニピュレーションにより起こりうる合併症
・骨折や脱臼:当院で経験した事はありませんが、全国的には報告があります。
・骨挫傷:しばらく痛みが続く事があります。約3週で軽快します。
治療は予約制となっています。
長引く肩の痛みでお困りの方は、外来でご相談下さい。
日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医 瀬戸信一朗