
交通事故など、強い衝撃を受けた後に起きることがある重度のむち打ち「バレ・リュー症候群」。
先月のブログでは、バレ・リュー症候群の概容・症状のご説明をさせていただきました。
今回は、頭痛・吐き気・耳鳴りなど、バレ・リュー症候群の症状を緩和・改善するための治療方法について、お話しします。
■バレ・リュー症候群の効果的な治療法は?
◎バレ・リュー症候群に対する、効果的な治療法は確立されていません
残念ながら、バレ・リュー症候群に対しては、現時点では効果的な治療法は確立されていません。
効果的な治療法が確立されていない理由は、バレ・リュー症候群の発症メカニズムがはっきりとは解明されていないためです。
交通事故など、強い衝撃を受けたことが原因で自律神経(交感神経・副交感神経)がダメージを受け、バレ・リュー症候群を発症する
と考えられていますが、上記の説も現時点での推論(仮説)であり、発症のメカニズムははっきりとは解明されていません。
そのため、バレ・リュー症候群に対しては、整形外科を含む各診療科目にて、症状・状態に応じた適切な治療方法を探っていく形になります。
■バレ・リュー症候群に対する、各診療科目の治療法
◎麻酔科、ペインクリニック、整形外科など、様々な診療科目でバレ・リュー症候群に対する治療が行われています
効果的な治療法は確立されていませんが、以下のような、様々な診療科目で、バレ・リュー症候群の症状の緩和・改善にアプローチするための治療が行われています。
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麻酔科
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ペインクリニック(※)
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整形外科
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精神科・心療内科
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鍼灸設備がある医療機関or鍼灸院(非医療機関)
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各診療科目・鍼灸院で処方する漢方薬
(※)ペインクリニック…原因を問わず、痛みをひき起こす
疾患・状態の診察と治療をメインに行う診療科目。
◎星状神経節ブロック注射(首の正面から交感神経節に打つ注射)について
自律神経へのダメージが発症の原因とされる、バレ・リュー症候群。
バレ・リュー症候群に対しては、麻酔科・ペインクリニック・一部の整形外科などで行われる「星状神経節ブロック注射」が選択肢の一つとして挙げられます。
星状神経節(せいじょうしんけいせつ)とは、首の付け根にある交感神経の集まり(神経節)です。
星状神経節ブロック注射では、自律神経を構成する2大要素の一つである交感神経(活動モードの自律神経)に局所麻酔薬(リドカインなど)を注射。
局所麻酔薬により一時的に神経の伝達を遮断することで、バレ・リュー症候群で生じている身体の痛み・身体の不調などの症状の緩和・改善を図ります。
{複数回の注射が必要になることが多いです}
星状神経節ブロック注射は、1回の注射でバレ・リュー症候群の症状を緩和・改善できるケースはあまりありません。通常、1~2週間に1回程度のペースで、複数回の注射(数回~数十回)の星状神経節ブロック注射を行うことが多いです。
{星状神経節ブロック注射の安全性・精確性を高めるには、熟練の技術が求められます}
星状神経節ブロック注射は首の正面から打つ注射のため、施術を行う医師に熟練の技術が求められる難しい注射法です。難しい注射法であり、すべての麻酔科・ペインクリニック・整形外科で星状神経節ブロック注射を行っている訳ではありません。
{星状神経節ブロック注射では、バレ・リュー症候群の症状を改善できないケースも}
星状神経節ブロック注射を行い、一時的に痛みを緩和できても、患者様によってはバレ・リュー症候群の症状そのものを根本的には改善できないケースもあります。
◎整形外科における、バレ・リュー症候群の治療方法
バレ・リュー症候群は、重度のむち打ちに伴って生じることがある状態(病態)です。むち打ちに伴う状態のため、整形外科では、頸椎捻挫のむち打ちに対して、以下のような治療で症状の緩和・改善にアプローチします。
①安静
むち打ち症の症状を緩和・改善するには、まずは、患部の安静が大切です。むち打ちでは多くのケースで頚椎カラーを使用し、首、および、頭部の安静を保ちます。
②リハビリ(運動療法・物理療法)
安静後は、首や身体の状態を見ながら、運動療法・物理療法によるリハビリを進めていきます。
≪運動療法≫
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頭部筋力訓練
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可動域訓練(レッドコード)
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リラクゼーション
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マッケンジー法
≪物理療法≫
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牽引療法
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温熱療法
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マイクロ波・低周波療法
③薬物療法
首や身体の痛みなど、症状が強い場合は鎮痛剤(飲み薬)・湿布による薬物療法を行い、症状の緩和を図ります。
④注射
首や身体の痛みやだるさが強く、リハビリ・薬物療法のみでは症状を抑えにくい場合は筋膜リリース・トリガーポイント注射を行い、症状の緩和を図ります。
◎精神科・心療内科における、バレ・リュー症候群の治療方法
バレ・リュー症候群は自律神経へのダメージが発症の原因と考えられています。
自律神経はストレスにより不調をきたしやすい神経です。ストレスとも関連しているため、バレ・リュー症候群に対しては、精神科・心療内科で以下のような治療が必要になるケースがあります。
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精神安定薬・抗うつ薬の処方
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ストレスを軽減するためのカウンセリング
◎鍼灸設備がある医療機関or鍼灸院における、バレ・リュー症候群の治療方法
バレ・リュー症候群の症状を緩和する方法としては、針や灸(鍼灸)などの中国医学(中医学)的なアプローチも。
鍼灸を行う場所は、鍼灸設備がある医療機関(一部の整形外科・内科・リハビリ科など)のほか、街中にある鍼灸院(非医療機関)が代表的です。
鍼灸による治療では、首周りを中心に鍼灸を実施。自律神経を整え、血行を促進することで、バレ・リュー症候群の症状の緩和・改善を図ります。
◎各診療科目・鍼灸院で処方する漢方薬による、バレ・リュー症候群の治療方法
バレ・リュー症候群に対しては、西洋医学のほか、各診療科目・鍼灸院で処方する漢方薬が選択肢になる場合も。
漢方薬による治療では、以下のような漢方薬を飲むことでバレ・リュー症候群の症状の緩和・改善を図ります。
[バレ・リュー症候群に対する治療で用いられることがある漢方薬の種類]
- 頭痛・めまいの症状を緩和:天麻、菊花、釣藤鈎など
- 血を補う(血液の質の改善、血流を促進):地黄、当帰、酸棗仁、芍薬、竜眼肉など
- 津液(しんえき)を補う(皮膚や粘膜を潤し、体温を調節する):枸杞子、麦門冬、天門冬など
上記のほか、症状に応じて、様々な種類の漢方薬を用いることがあります。
【交通事故の後、頭痛・吐き気・耳鳴りなどの症状が続いている方は当院までご相談ください】
瀬戸整形外科クリニックでは、むち打ちなど、事故(交通事故、転倒・転落事故)で負ったケガ・後遺症の治療を行っています。
事故に遭った後は、整形外科をはじめとする医療機関で適切な治療・リハビリを受けることが重要です。
(※)整形外科でバレ・リュー症候群の症状を改善できない場合は、
整形外科以外の診療科目での治療が必要になるケースがあります。
交通事故の後、頭痛・吐き気・耳鳴りなど、気になる症状が続いている方は当院までご相談ください。
