急激な動作や運動不足などが原因でひき起こされることがある、筋肉のケガ、肉離れ。
前回のブログでは、肉離れの症状・原因・検査方法をご説明させていただきました。
今回は、肉離れの応急処置、および、治療&予防方法について、お話しします。
目次
■肉離れの応急処置の仕方
1.安静
◎肉離れを起こした直後から、安静にすることが重要です
肉離れの治療は、肉離れを起こした直後から、まずは、患部を動かさないよう、安静にすることが重要です。
肉離れを起こした直後は、以下の「RICE処置」による応急処置をしましょう。
応急処置後は、できるだけ早めに整形外科を受診し、治療を受けることをおすすめします。
整形外科では、肉離れの状態を確認・検査した後、必要に応じて、患部を固定するために弾性包帯やサポーターを装着します。痛みが強いケースでは、患部への刺激を防ぐために松葉杖を貸し出すことも。
肉離れの部位の痛みが強い場合は、痛み止めの内服薬や湿布を処方する場合もあります。
2.応急処置
◎肉離れを起こした直後は、「RICE処置」による応急処置が基本になります
肉離れを起こした直後は、以下の、RICE処置による応急処置が基本になります。
[RICE処置]
- Rest(安静)······ 安静にし、患部の腫れや神経・血管にかかるダメージを軽減する
- Ice(冷やす)······ アイスパックや氷水で患部を冷やし、炎症・内出血を抑える
- Compression(圧迫)······ 弾性包帯やサポーターで患部を圧迫し、痛み・炎症を抑える
- Elevation(挙上)······ 患部を心臓より高くして、炎症を抑える
RICE処置は、整形外科分野のケガにおいて、基本となる応急処置の方法です(※)。
(※)RICE処置が適さないケガもあります。
RICE処置は、患者様ご自身、または、周りの方で行えます。肉離れを起こした直後から、患者様、または、周りの方が上記のRICE処置を行うことで、痛みの緩和、および、治癒期間を早める効果を期待できます。
◎肉離れは自然に筋肉がくっつくことが多いですが、放置すると後遺症が起きやすくなります
重度(Ⅲ度)の肉離れを除き、通常、肉離れは安静にしておくことで、自然に筋肉がくっついていくことが多いです。
痛みが改善するまでの期間は、肉離れの程度や患者様によって異なります。個人差はありますが、肉離れを起こしたときから、おおむね1~4週程度です(※)。
(※)目安の期間です。筋肉がくっつくまで、
上記以上の期間がかかる場合もあります。
重度の肉離れを除き、通常、肉離れは自然に筋肉がくっつき、治癒に向かいます。ただし、自然に筋肉がくっつくからと言って、肉離れで医療機関を受診しないのは危険です。
医療機関を受診せず放置していると、肉離れを起こした部位の筋肉が硬くなりやすいです。硬くなった筋肉が原因で筋肉の柔軟性が失われ、肉離れを再発しやすくなるなど、後遺症が起きやすくなります。
■肉離れの治療
3.ストレッチ・運動によるリハビリ
◎安静後、患部の状態を見ながら、筋肉が硬くならないようにするためにストレッチ・運動を進めていきます
肉離れを起こしたときは、まずは、安静にすることが重要です。筋肉の損傷・断裂の程度によって期間に差はありますが、通常、2~3週間程度は患部を固定して安静にします。
当院では、まずエコーを使い、筋肉の断裂の範囲や程度を把握します。血種(血の塊)が生じているような重度の肉離れは、松葉杖歩行が1か月程度必要になることもあります。通常は1~3週間程度、患部を安静にした後に、患部の状態を見ながら、筋肉が硬くならないようにするためにストレッチ・運動によるリハビリを進めていきます。
2~3週間程度で筋肉を動かすと聞き、患者様によっては「早すぎるんじゃない?」と感じるかもしれません。
肉離れの治療で比較的早期から筋肉を動かすのは、筋肉がくっついた部位が瘢痕組織になって硬くなるためです。肉離れ後、安静期間が長すぎてあまり筋肉を動かさずにいると、瘢痕組織を中心に肉離れを起こした部位の筋肉の柔軟性が失われてしまい、筋肉が硬くなっていきます。
上記の理由により、肉離れを起こしたときは、安静後は、比較的早期からストレッチ・運動を始めることが大切です。整形外科の治療では、患部の状態を見ながら、無理のない範囲で、筋肉が硬くならないようにするためのストレッチ・運動によるリハビリを進めていきます(※)。
(※)重度(Ⅲ度)の肉離れでは、ストレッチ・運動による
早期のリハビリを行えないケースがあります。
■肉離れの予防方法
◎筋肉を温め、ストレッチして、適切な方法で動作することが大切です
肉離れを防ぐためには、筋肉を温め、ストレッチして、適切な方法で動作することが大切です。
疲れが溜まっている場合は、休息を取り、身体・筋肉を休ませることも重要になります。
運動不足にならないように、日頃から身体を動かして筋力を維持することも、肉離れの予防には欠かせません。
肉離れの予防方法①筋肉を温める
肉離れを起こしやすい原因の一つに、筋肉の冷え・身体の冷えがあります。
動作の前には、暖房器具を用いたり、ウォーキング・軽いジョギングを行うことで、筋肉が温まり、肉離れを防ぎやすくなります。
肉離れの予防方法②ストレッチする
肉離れを起こしやすい原因の一つに、運動不足・ストレッチ不足が挙げられます。特に、運動不足で筋力が落ちており、筋肉が硬くなっている方は急激な動作による肉離れが起きやすいです。
動作の前には、足(ふくらはぎ・ハムストリングス・太ももなど)を中心に、筋肉をストレッチすることで肉離れを防ぎやすくなります。
肉離れの予防方法③適切な方法で動作する
無理な姿勢からの動作や、不適切な動作は肉離れを起こしやすいです。
スポーツ・格闘技、および、運動会などのレクリエーションで身体を動かすときは、適切な方法で動作することで、肉離れを防ぎやすくなります。
適切な方法での動作については、指導者がいる場合は、指導者から動作を学ぶことをおすすめします。指導者がいない場合は、整形外科で医師・理学療法士に身体の動かし方をアドバイスしてもらうことで、適切な動作の仕方を身につけやすくなります。
肉離れの予防方法④休息を取り、身体・筋肉を休ませる
仕事が忙しく、十分に睡眠や休息が取れていない、または、運動のし過ぎで休息が十分でないと、筋肉が硬くなって肉離れが起きやすくなります。
運動をしていなくても、仕事などの原因により精神的にストレスが溜まっていると、筋肉が硬くなりやすいです。
精神的・肉体的ストレスが溜まっている場合は、休息を取り、身体・筋肉を休ませてあげてください。休息を取り、身体・筋肉を休ませてあげることで、自然と身体・筋肉がほぐれやすくなり、肉離れの予防効果を高められます。
肉離れの予防方法⑤日頃から適度に身体を動かし、筋力を維持する
運動不足の方は筋肉が硬くなりやすく、肉離れが起きやすいです。
運動不足にならないよう、以下のような運動で日頃から適度に身体を動かし、筋力を維持することで、肉離れを防ぎやすくなります。
[筋力を維持するための適度な運動]
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- 軽い筋トレ(かかとの上げ下げ(カーフレイズ:ふくらはぎの運動)、スクワットなど)
【肉離れが疑われる・肉離れを起こした場合は、当院までご相談ください】
中程度~重度の肉離れを起こした瞬間は、「ブチッ」と筋肉が切れる音がするケースもあります。肉離れを起こした瞬間から強い痛みを感じるケースがある一方、軽度の場合は、肉離れを筋肉痛と間違ってしまうことも。
軽度~重度など、ケガの程度・患部の状態に関わらず、肉離れを自己判断で放置するのはおすすめできません。筋肉が自然にくっついても、医療機関で適切な治療を受けなかった場合、くっついた箇所の筋肉が硬くなって肉離れが再発しやすくなります。
肉離れを起こした場合は、まずは、今回ご紹介した「RICE処置」を行いましょう。RICE処置を行った上で、できるだけ早く、整形外科を受診することが重要です。
- ダッシュやジャンプをしたとき、ふくらはぎ・太ももの裏に激痛を感じた
- 急激な動作をしたとき、筋肉に激痛を感じた
など、肉離れが疑われる・肉離れを起こした場合は、当院までご相談ください。