スポーツや日常生活で起きやすい筋肉のケガに、肉離れ(にくばなれ)があります。
肉離れ、という言葉は聞いたことがあるものの、何なのかはよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、一般的に見られる筋肉のケガ「肉離れ」について、症状・原因・検査方法をご説明します。
目次
■肉離れとは?
◎筋肉が部分的に損傷・断裂した状態を指します
肉離れとは、筋肉の線維(筋線維)が部分的に損傷したり、筋線維が断裂した状態を指します。
■肉離れの症状
◎肉離れを起こした瞬間の痛み方
肉離れを起こした瞬間は、筋肉に鋭い痛みを感じたり、「ブチッ」という音が聞こえることがあります。鋭い痛みと共に、ケガをした箇所の筋肉の力が抜けるような感覚になる場合も。
◎筋線維の断裂の程度により、痛み方が異なります
肉離れは、筋線維の断裂の程度により、以下のように、痛み方が異なります(以下の「程度別 肉離れの症状」をご参照ください)。
なお、下記はいずれも肉離れです。肉離れですが、一般的に「肉離れ」という場合は、Ⅱ度の筋断裂を指します。
Ⅰ度の場合は、筋肉痛と間違われてしまい、肉離れであることに気がつかないケースが多いです。
Ⅲ度も肉離れですが、Ⅲ度の肉離れはわかりやすいように、あえて「筋断裂」「筋肉の断裂」と呼ぶ場合もあります。
[程度別 肉離れの症状]
Ⅰ度(筋線維の微細な損傷)
- 患部の筋肉に軽い圧痛(あっつう:押すと痛む)がある
- 患部が腫れる
- 患部の筋肉を大きく伸ばしたときに軽く痛む
Ⅱ度(筋線維の一部が断裂(部分断裂))
- 患部の筋肉に強い圧痛がある
- 患部が腫れる
- 患部の筋肉が凹む
- 患部が内出血を起こし、日数が経つごとに、紫赤色→青色→黄色→茶褐色に皮膚の色が変わる
- 患部の筋肉を少し伸ばしたときに痛む(膝など、関節を曲げていれば筋肉の痛みは少ない)
Ⅲ度(筋線維が完全に断裂(完全断裂))
- 患部の筋肉に非常に強い圧痛がある
- 患部が腫れる
- 患部の筋肉が大きく、深く凹む
- 患部が広い範囲で内出血を起こし、日数が経つごとに、紫赤色→青色→黄色→茶褐色に皮膚の色が変わる
- ケガをした瞬間から、患部の筋肉が激しく痛む(筋肉を伸ばしていないときや安静時にも激しく痛む)
■肉離れの原因&肉離れが起きやすい部位
◎急激な動作、無理な動作をしたときに肉離れが起きやすいです
スポーツで身体を動かしたときや、ダッシュ、ジャンプなど、急激な動作をした瞬間に肉離れが起きやすいです。
急激な動作に加え、無理な姿勢からの不自然な動作、または、運動不足やケガなどで筋肉の柔軟性が失われている方が運動をしたときなどにも、肉離れが起きることがあります。
◎ふくらはぎ、太ももの裏(ハムストリングス)の肉離れが多く見られます
肉離れは、主にふくらはぎに起きやすいです。ふくらはぎのほか、太ももの裏側の筋肉であるハムストリングスも、肉離れが起きやすい部位になります。
太もも(太ももの前面:大腿四頭筋)や、太ももの内側(内転筋)も、肉離れが起きやすいです。
上記の筋肉はいずれも、足であることに気づかれましたでしょうか?足の筋肉は、人間を支える基礎となる筋肉です。
スポーツを含め、歩く・走る、ダッシュ、ジャンプなど、あらゆる動作のスタート時に足の筋肉が使われます。急激な負荷がかかりやすい箇所のため、ふくらはぎを中心に、足の筋肉に肉離れが起きるケースが多いです。
なお、足以外にも、筋肉がある箇所なら、肉離れは全身に起きる可能性があります。腕、背中、腹部の筋肉が肉離れを起こすことも。
■肉離れの検査方法(診断の仕方)
◎超音波診断装置を用いたり、ストレッチ時の痛み方を見て、肉離れを検査・診断します
肉離れの検査には、超音波診断装置(エコー)が有効です。超音波診断装置を用いて患部を診ることで、筋断裂の程度や血種(内出血した血のかたまり)を確認できます。
超音波診断装置のほか、患部の筋肉を伸ばしたときの痛み方で、肉離れの程度(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)を見分ける場合もあります。
[患部の筋肉を伸ばしたときの痛み方で、肉離れの程度を見分ける診断方法(ふくらはぎの肉離れの場合)]
Ⅰ度(筋線維の微細な損傷)
- 筋肉を伸ばしたときに軽く痛む
Ⅱ度(筋線維の一部が断裂(部分断裂))
- 筋肉を伸ばしたときに強く痛む
- 膝を曲げていれば、痛みは軽い
Ⅲ度(筋線維が完全に断裂)
- 筋肉を伸ばしたときに激痛がある
- 膝を曲げていても、激しく痛む
- 安静時にも、激しく痛む
- 激しく痛み、つま先立ちができない
【急激な動作をした・無理な姿勢で身体を動かした後に筋肉が痛む方は、整形外科で受診を】
肉離れは筋肉痛やこむらがえりなどと間違われやすく、放置してしまう方が少なくありません。
肉離れが起きたとき、日数が経って筋肉がくっついた部分は「瘢痕(はんこん)」という組織になり、くっついた箇所が硬くなります。
なお、肉離れは必ずしも、自然に筋肉がくっつくとは限りません。Ⅲ度など、重度の肉離れでは自然に筋肉がくっつかないケースも多いです。
医療機関で受診せず、肉離れを放置すると、損傷・断裂部分にできた瘢痕組織が原因で筋肉が硬くなり、以下のような後遺症が残りやすくなります。
[医療機関で受診せず、肉離れを放置した場合に起きやすい筋肉の後遺症]
- 肉離れを起こした箇所の筋肉が硬くなる
- 筋肉が硬くなり、伸ばしにくくなる(筋肉の可動域が狭まってしまう)
- 筋肉が硬くなり、伸ばしにくくなることで、同じ箇所・近い箇所の筋肉に肉離れが再発しやすくなる
上記の、瘢痕組織により筋肉が硬くなる後遺症のほか、重度の肉離れで大きく筋肉が断裂した場合は、肉離れを起こす前と比べて、大幅に筋力が低下します。
◎急激な動作、無理な姿勢での動作は要注意
スポーツで身体を動かしたときや、ダッシュ時など、急激な動作をした瞬間に肉離れが起きやすいです。無理な姿勢で身体を動かした場合も、肉離れが起きることがあります。
急激な動作をした・無理な姿勢で身体を動かした後に筋肉が痛む方は、整形外科での受診をおすすめします。
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今回は、肉離れの症状・原因・検査方法について、ご説明をさせていただきました。
次回のブログでは、肉離れの治療・ケア方法をご紹介します。