「イタタタ…ここ数年、何だか肩が痛い 五十肩かなあ?」
「でも、まだ30代なのに、五十肩になるの?もしかして、違うケガ?」
ガラスの肩、肩慣らしをする、肩を温める…などの言葉が示すように、肩は、とってもデリケートな関節です。
デリケートなため、腰や膝と並んで、肩は疾患が起きやすい箇所でもあります。
中でも、特に多いのが、肩の腱板の損傷「肩腱板損傷」です。
肩の痛みにより、肩腱板損傷は五十肩と間違われることも。
今回は、肩の疾患で多く見られる「肩腱板損傷」の症状・原因について、ご説明します。
目次
■腱板の仕組み 肩腱板損傷とは
◎腱板=上腕骨を肩関節につなぎ留める、板状の腱
腱とは、筋肉を骨につなぎ留める繊維状の組織です(筋肉の骨側の付着部分)。
腱板(けんばん)とは、平べったい板状の腱を指します。
肩関節は、肩甲骨の受け皿に、以下の4つの腱板を通じて上腕骨(二の腕)をつなぎ留める形で構成されています。
[肩を構成する4つの腱板]
・棘上筋腱(きょくじょうきんけん)
・棘下筋腱(きょくかきんけん)
・肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)
・小円筋腱(しょうえんきんけん)
◎肩の腱板が部分的or完全に切れてしまった状態を肩腱板損傷と呼びます
肩を構成する4つの腱板のうち、一つ、または、複数の腱板が部分的or完全に切れてしまった状態を肩腱板損傷(肩腱板断裂)と呼びます。
[肩の腱板の断裂状態の違い]
部分的断裂:腱の線維の一部は切れているものの、腱板の表と裏に通じる穴が開いていない、不全的な断裂
完全断裂: 腱の線維が切れ、腱板の表と裏に通じる穴が開いてしまった断裂
勘違いされやすいのが、完全断裂とは、腱板がブチッとまるごと千切れてしまった状態のみを指す言葉ではない点です。
骨に腱板はくっついてはいるものの、腱板の表と裏に通じる穴(小さな穴を含む)が開いている場合は、完全断裂に分類されます。
なお、腱板がブチッとまるごと千切れてしまった状態は、もちろん、完全断裂に含みます。ただし、肩腱板損傷の中でも、交通事故や転倒などで極度の力がかかった場合を除き、腱板がブチッとまるごと千切れるケースはそれほど多くはありません。
■肩腱板損傷の症状
◎腕を水平に上げると肩が痛む、肩に力が入らずストンと腕が落ちてしまう、などの症状が現れやすくなります
肩腱板損傷は、肩の腱板が部分的or完全に切れているため、肩関節の安定性が失われることが多いです。
肩関節の安定性が失われると共に、肩関節の中で肩の腱板と、肩甲骨や上腕骨の骨端がこすれ合い、以下のような症状が現れやすくなります。
[肩腱板損傷で現れやすい症状]
・身体の横に腕を水平に上げると肩が痛む
・腕を上げたり、肩を回したときに肩関節から音(コリコリ、ゴリッなど)がする
・肩が痛み、服や下着の脱ぎ着がしにくい
・髪を洗っていると、すぐに肩がだるくなる
・スムーズに肩を回しにくい
・横向きに寝ると肩が痛む
・寝返りをしたときに肩が痛む
~肩腱板損傷テスト~ 当てはまる症状がないかチェックしてみましょう
以下は、肩腱板の損傷の有無を確認するテストです。肩が痛む・肩に違和感がある方は、ご自身に当てはまる症状がないか、チェックしてみましょう。
なお、①と②をするときは、「手のひらを下にした状態」と「手のひらを上にした状態」の2通りで確認してみてください。
①ドロップアームテスト
1.腕を伸ばしたまま、身体の横に水平に腕を上げます
2.その状態をキープします
水平な状態をキープできない(ストン、と腕が落ちてしまうことも)、または、誰かに上から腕を押されると抵抗できずに腕が落ちてしまう場合は、肩腱板が損傷している可能性があります。
②棘上筋テスト
1.腕を伸ばしたまま、身体の横に水平に腕を上げます
腕を上げるときに肩に痛みやひっかかりを感じた場合は、肩腱板が損傷している可能性があります。
③インピンジメントテスト
1.肘を90度に曲げた状態で、身体の横に水平に腕を上げます(授業中、手を挙げて質問をするポーズの、肘を90度に曲げた形)
2.その状態のまま、手のひら側(前)や手の甲側(後ろ)に前腕を倒します
前腕を倒したときに肩に痛みを感じた場合は、肩腱板が損傷している可能性があります。
■肩腱板損傷の原因は?
◎スポーツや仕事で重い物を持ち上げる、肩を強くぶつけたなど、原因は様々
肩腱板が損傷する(腱板が部分的or完全に切れる)原因は、様々です。
主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
[肩腱板損傷の主な原因]
・スポーツや仕事で重い物を持ち上げ、肩に負荷がかかった
・スポーツや仕事で、くり返し、肩を動かした
・交通事故や転倒、スポーツで、肩を強くぶつけた
・間違ったフォームでのウェイトトレーニング
◎肩腱板損傷を起こしやすい方
以下のような要素があると、肩腱板損傷を起こしやすいです。特に、40歳以上の中高年の方は、加齢による肩腱板損傷が多く見られます。
[肩腱板損傷を起こしやすい方]
・40歳以上(加齢による腱板の柔軟性の低下&腱板の質の低下(老化))
・野球やテニスなどで、くり返し肩を動かしている
・仕事で、頭よりも上の位置に腕を上げて作業をすることが多い
・肩腱板損傷になったご家族がいる(腱板の遺伝的な要素)
【肩の痛みや違和感がある方は、当院までご相談ください】
瀬戸整形外科クリニックでは、超音波診断装置(エコー)による肩腱板損傷の診断を行っています。肩の痛みや違和感がある方は、当院までご相談ください。
肩腱板損傷は、肩の腱板が部分的or完全に切れた状態です。腱板が切れているため、通常、肩腱板損傷は、放置して、自然に良くなることはありません。
肩腱板損傷に対しては、
・年齢
・スポーツや仕事への影響
・生活への影響
上記のような、患者様によって異なる要素&ご希望を考慮しながら、適切に処置・治療を進めていくことが大切です。
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今回は、肩腱板損傷の症状・原因をご説明させていただきました。次回のブログでは、「肩腱板損傷の治療方法」について、お話しします。