40代・50代の中高年の方に多い肩のお悩み、「四十肩・五十肩」。
四十肩・五十肩(以降まとめて「五十肩」とします)は、肩関節の中にある関節包に炎症が起きる疾患です。
五十肩になると関節包の炎症により、肩が痛くて腕を水平以上に挙げられない、就寝中に肩が痛むなどのさまざまな症状が起きることがあります。
五十肩については、以前、ブログでもご説明をさせていただきました。
お悩みの方が多い五十肩ですが、近年、難治性の五十肩に対する新しい治療法が開発されました。名前を「サイレントマニピュレーション」と呼びます。
これまでの治療で改善できなかった方も、サイレントマニピュレーションにより五十肩の症状が軽減され、治療期間を短縮できたケースもあり、注目が集まっている治療法です(※)。
(※)一例です。サイレントマニピュレーションの
効果を保証するものではありません。
今回は、当院で行っている五十肩の治療法「サイレントマニピュレーション」をご紹介します。
目次
■サイレントマニピュレーションとは
◎肩に麻酔をかけ、医師の手技によって肩関節を動かしていく治療法です
サイレントマニピュレーションとは、患者様の肩に麻酔をかけた状態で、医師が肩関節を動かし、関節の可動域の改善を図る治療法です。
◎痛みを感じることはありません
サイレントマニピュレーションでは肩に伝達麻酔を行います。麻酔により、サイレントマニピュレーションの施術中に痛みを感じることはありません。ご安心ください。
■サイレントマニピュレーションの対象となる患者様は?
◎原因がわからず、肩関節が硬くなって肩の動きに制限が出ている「凍結肩」の患者様が主な対象です
サイレントマニピュレーションの主な対象となる五十肩の患者様は、以下になります。
・五十肩の原因がわからず、肩の痛みや肩関節を回せないなどの症状が続いている(=凍結肩:フローズンショルダー)
・鎮痛剤や注射、湿布、リハビリなどの治療を行っても五十肩の症状が改善されなかった
◎上記以外の五十肩の患者様には、鎮痛剤や注射、湿布、リハビリでの治療をおすすめします
原因がはっきりせず、長いあいだ肩の痛みが続いていたり、肩関節の可動域に制限が起きている凍結肩(フローズンショルダー)の患者様が、サイレントマニピュレーションの主な対象です。
凍結肩ではない、原因がわかっている(ある程度、原因が推測できる)五十肩や初期の五十肩の患者様には、鎮痛剤や注射、湿布、リハビリでの治療をおすすめします。
なお、骨粗しょう症で五十肩をお持ちの場合は、施術によって肩関節が骨折するおそれがあるため、サイレントマニピュレーションは行えません。
■サイレントマニピュレーションの施術の流れ
当院では、以下のような流れでサイレントマニピュレーションを進めていきます。
1.肩への伝達麻酔
点滴による、肩への伝達麻酔を行います。麻酔の際は患者様に横向きに寝ていただき、超音波画像で肩周りの状態を確認しながら、鎖骨部より点滴にて伝達麻酔を注入します。
注射時の痛みは点滴と同じくらいの軽いものです。点滴による麻酔液の注入後は、肩関節に麻酔が効いて痛みを感じなくなるまで、20分程度、ベッドでお休みいただきます。
2.サイレントマニピュレーションの実施
20分程度、ベッドでお休みいただき、肩関節に痛みを感じなくなったことを確認できましたら、医師によるサイレントマニピュレーションを実施します。
サイレントマニピュレーションでは、医師が手技にて患者様の肩関節を動かしていきます。肩関節を動かす際、関節からコクコク・プチプチという音がすることがありますが、施術に伴う音のため、ご心配はいりません。
施術を行い、肩関節の関節包が十分に広がったことを確認して、施術完了です。施術後は肩関節に痛み止めの注射を行い、治療の後に感じる肩の痛みを軽減します。
—–
サイレントマニピュレーションの診察~ご帰宅までの院内滞在時間は、平均で1時間半程度です。
なお、サイレントマニピュレーションでは肩への麻酔により、施術後、7~12時間程度、肩、および、肘が動かせなくなります。このため、施術後は三角巾で腕を吊り、肩や肘を保護します。時間が経ち、肩や肘が動かせるようになったら三角巾を外してください。
3.医師・理学療法士によるリハビリの実施
施術後は、サイレントマニピュレーションで動くようになった肩関節の可動域を維持するため、週2回程度、医師の指示の下、理学療法士によるリハビリを実施します。
凍結肩から回復して動くようになった肩関節の可動域を維持するためには、週2回のリハビリが2ヶ月程度、必要になることが多いです。
{サイレントマニピュレーションの効果が出るまでの目安の期間は?}
サイレントマニピュレーションで五十肩の痛みが軽減され、無理なく肩を動かせるようになるまでには、施術後、平均で1~3ヶ月間程度かかります(※)。
(※)目安の期間です。患者様によっては上記よりも早く、
または、遅く、効果が出るまでに時間がかかるケースが
あります。肩関節の状態によっては、サイレントマニ
ピュレーションの効果が得られない場合もあります。
■サイレントマニピュレーションの注意点、副作用・合併症について
・稀なケースですが、1回の施術では効果を得にくい場合があります。1回の施術で効果を得られなかった場合は、1回目の施術から2~3ヶ月後に2回目の施術が必要になることがあります。
・麻酔により、左右どちらか片方の目に充血やまぶしさなどの症状が起きることがあります。通常、目の症状は施術後、2週間程度で治ります。
・ごく稀に、麻酔薬による中毒を起こす可能性があります。当院では万が一の中毒が起きた場合に備え、酸素、および、脂肪乳製剤点滴をご用意しております。
・当院では生じた例はありませんが、施術により、肩関節の骨折や脱臼が起きたケースが報告されています。
・施術により、肩周りの筋肉が傷つき(肩の挫傷)、施術後、肩の痛みが続くことがあります。通常、肩の痛みは施術後、3週間程度で治ります。
【肩の痛みが長引いている方、五十肩がなかなか治らない方は当院までご相談ください】
サイレントマニピュレーションは予約制です。保険診療のため、1回の施術料金は3割負担で7,000円になります。
今回は、伝達麻酔の下で行う五十肩の治療法「サイレントマニピュレーション」をご紹介させていただきました。
肩の痛みが長引いている方、五十肩がなかなか治らない方は、当院までお気軽にご相談ください。
初診では医師による診察・検査を行い、患者様の肩の状態に応じて適切な治療方法をご提案させていただきます。