「50歳を過ぎたあたりから、ひざの痛みが…」
「ひざが痛くて、階段がつらい…」
上記のようなひざの痛み、ありませんでしょうか?中高年になると、ひざに痛みを感じる方は少なくありません。
中高年の方のひざの痛みで最も多いのが「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」です。変形性膝関節症は急激に症状が悪化することは少なく、年齢を重ねるごとに痛みが増す、という特徴があります。
今回は「変形性膝関節症」の原因・症状・治療方法&予防の仕方についてご紹介します。
目次
■変形性膝関節症とは?
◎ひざの軟骨がすり減り、ひざに痛みを感じる疾患です
変形性膝関節症とは、ひざのクッションの役割を果たしている膝関節の軟骨がすり減り、ひざに痛みを感じる疾患です。
■変形性膝関節症の原因
◎主な原因は加齢
変形性膝関節症をひき起こす主な原因は加齢です。加齢により身体の組織の水分量が減ると共にひざの軟骨が弾力性を失い、膝関節の骨がこすれ合ってひざに痛みを感じます。
加齢が原因のため、特に50歳以上の中高年の方に変形性膝関節症が多いです。40歳を過ぎた頃から徐々にひざの痛みを感じ始めるケースもあります。
◎筋力不足や肥満など、加齢以外の原因で発症することも
変形性膝関節症の主な原因は加齢です。ただし、加齢以外の以下のような原因でも変形性膝関節症を発症することがあります。
・筋力不足
運動不足などにより脚の筋力が弱っているとひざに負担がかかってしまい、発症につながりやすいです。
・肥満
肥満で体重が重くなるとひざに負担がかかり、発症しやすくなります。
・女性
男性に比べ、女性は約1.5倍の確率で変形性膝関節症になりやすい、という研究結果があります(※)。女性に多い理由ははっきりとはわかっていません。女性ホルモンが影響しているのではないかと考えられています。
(※)「日本人男女における変形性膝関節症、腰椎症、骨粗鬆症の有病率:変形性関節症・
骨粗鬆症の障害研究」吉村 典子(東京大学)(2009)より引用。
・重い物を繰り返し持ち上げる
格闘技やウエイトトレーニング、肉体労働など、重い物を繰り返し持ち上げる習慣がある方はひざに負担がかかってしまい、発症することがあります。
・半月板や靭帯の損傷
ひざの半月板や靭帯を損傷しているとひざにかかる衝撃を受け止めにくくなり、発症につながることがあります。
・O脚
O脚の方は脚が外に開くことでひざの内側に負担がかかりやすく、発症につながることがあります。
・遺伝
両親のどちらか、または、2人共に変形性膝関節症を持っている場合、遺伝により発症しやすいことが研究で指摘されています(※)。
(※)「A functional polymorphism in the 5′ UTR of GDF5
is associated with susceptibility to osteoarthritis」
理化学研究所・南京大学 共同研究(2007)より引用。
■変形性膝関節症の症状
◎ひざの痛み、ひざに水が溜まる、が主な症状です
変形性膝関節症の主な症状はひざの痛みです。疾患が進行すると組織の炎症によって関節内の滑液(正常な物と比べて粘り気が減ってしまった滑液)が増え、膝に水が溜まり始めます。
1.初期
歩き始めや立ち上がる際など、動作を始めるときに痛みを感じることがあります。動作を始めるとき以外はあまり痛みを感じないことが多いです。
2.中期
動作を始めるときに加え、歩行時にも痛みを感じ始めます。数百メートル程度の歩行で痛みを感じることも。
階段の上り下りで痛みを感じたり、正座をするのがつらくなってきます。
3.末期
末期になると膝の軟骨がほぼ無くなり、関節の骨同士が直接こすれ合うようになります。
痛みが激しく、完全に膝を曲げる・脚をピンと伸ばす、ことができなくなり日常生活に支障をきたします。歩く・立つ・しゃがむが困難になるため、肉体的負担に加えて精神的なストレスも増えやすいです。寝ているときなど、安静時にも痛みが見られます。
■変形性膝関節症の治療方法
◎痛みを緩和し、症状の改善を目指します
・外用薬や内服薬、注射による痛みの緩和
症状が比較的軽い場合は湿布などの外用薬や痛み止めの内服薬により痛みを緩和します。痛みが強いときはひざの関節内にヒアルロン酸注射をすることもあります。
・リハビリ
痛みの緩和と共に、リハビリ(運動療法、物理療法)による治療を進めていきます。リハビリでは筋肉トレーニングによる脚の筋力(大腿四頭筋など)の強化や、ストレッチにより膝関節の可動域を広げるなどの運動療法を行います。
物理療法では各種の機器を用い、ひざを温めるなどの治療を行います。
・手術
治療を行っても痛みや症状が改善されず、生活に支障をきたす場合は手術を検討します(※)。
変形性膝関節症の手術は主に以下のようなものがあります。
・関節鏡視下手術(関節内の水やはがれ落ちた軟骨などを取り除く)
・高位脛骨骨切り術(HTO手術)(プレートやネジで膝関節を固定・矯正する)
・人工膝関節置換術(膝関節を人工関節に置き換える)
(※)手術が必要な場合は提携の病院をご紹介いたします。
■変形性膝関節症を予防するには?
◎脚の筋肉を鍛える
脚、特に太ももの筋肉である大腿四頭筋を鍛えることで膝関節にかかる負担の軽減につながります。
◎ダイエットする
ダイエットで体重を減らすことで膝関節にかかる負担の軽減につながります。
◎ひざに負担がかかる動きを控える(正座をしない、洋式トイレを使用するなど)
正座をしない、洋式トイレを使用するなど、痛みが出やすいひざの動きを控えることで膝関節にかかる負担の軽減につながります。
◎血行を良くする
変形性膝関節症など、慢性的な関節の疾患は身体が冷えると血行の悪化により痛みが増す傾向があります。
湯舟につかる(半身浴がおすすめです)、ひざのサポータをつけるなど、ひざを温めて血行を良くすることで症状の緩和を期待できます。
【膝の痛みがある方は当院までご相談ください】
瀬戸整形外科クリニックでは、以下を用いて検査・治療を行っています。
<検査機器>
・レントゲン
・骨密度測定装置(DEXA)
・超音波診断装置(エコー)
・神経伝導速度診断装置
<一般整形外科 治療内容>
・徒手整復
・ギプス固定
・装具作製
・各種ブロック注射
<リハビリ設備>
・電極療法(SSP)
・低周波療法
・レーザー療法
・トクラー(テクトロン)
・マイクロウェーブ
・過流浴(バイブラ)
・ウォーターベッド
・エルゴメーター
・牽引器(牽引+ホットパック)
など
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外用薬・内服薬、注射、物理療法による痛みの緩和に加え、瀬戸整形外科クリニックではリハビリ(運動療法)に力を入れております。
リハビリは医師の監修のもと、理学療法士がそれぞれの患者様に適した運動メニューを作成し指導を行います。
変形性膝関節症は筋肉トレーニングにより脚の筋肉を強化することで膝関節の負担の軽減につながり、痛みを緩和する効果を期待できます。
筋力トレーニングに加え、ご自身でストレッチを行うことで膝の可動域を広げやすくなります(ストレッチのやり方をお教えします)。また、院内のリハビリルームにて行うレッドコードによる訓練(天井から垂らしたロープで脚を支えながら動かします)も膝の可動域を広げるのに役立ちます。
変形性膝関節症は加齢にともなう疾患のため、「年だから」と放置してしまうケースが多いです。しかし、放置しているとどんどん軟骨がすり減っていき、階段を上り下りできない、短い距離も歩けなくなるなど、生活に大きな支障をきたすおそれがあります。
膝の痛みや違和感があるときは当院までお気軽にご相談ください。検査・診断を行い、お1人お1人に合った治療方法をご提案させていただきます。