腰椎分離症とは、腰骨の疲労骨折、および、疲労骨折にともない腰椎の椎弓が分離する疾患です。腰椎分離症はスポーツで腰に負担がかかっている方が発症しやすく、中高生で部活動をしているお子さんにもよく見られます。
今回は「腰椎分離症」の原因、症状、治療方法についてご説明します。
目次
■腰椎分離症の原因
◎ジャンプの衝撃や背中をそらす動作が発症の原因になることが多い
腰椎分離症はスポーツなどでジャンプをしたときの衝撃や背中をそらす動作が発症の原因になることが多いです。
ジャンプや背中をそらす動作など、腰に負担がかかる動きをくりかえしていると腰椎の後ろ側(背中側)にある椎弓(ついきゅう)というリング状の部分にひびが入ることがあります。
1回の動作でひびが入るケースは少なく、ほとんどはくりかえしの動作による疲労骨折です。
そして、腰椎の椎弓に起きた疲労骨折によるひび割れが進むと椎弓が完全に折れ、腰椎から折れた椎弓の先端が分離します。これが、腰椎分離症が起きるメカニズムです。
◎腰椎分離症は成長期の中高生に起きやすい
腰椎分離症は成長期の中高生でスポーツなどの部活動をしているお子さんに起きやすい疾患です。
成長期の中高生は骨が発達する時期であり骨組織が未成熟なため、スポーツなどでくりかえし腰椎に衝撃がかかると椎弓にひびが入りやすいです。小学校高学年から中学生の時期に椎弓にひびが入り、中高で部活動を続けた結果、高校生・大学生の時期に椎弓が完全に折れ、腰椎が分離するケースが多く見られます。
◎成人の方も腰椎分離症を発症することがある
成人の方も腰に衝撃がくりかえしかかることで腰椎分離症を発症することがあります。
成人の方が腰椎分離症を発症するケースは、未成年の時期に行っていたスポーツがきっかけになっていることが多いです。中高生のときにすでに椎弓にひびが入っており、成人後に椎弓が完全に折れて分離し、腰椎分離症を発症するケースが多く見られます。
◎腰椎分離症が起きやすい箇所
腰椎分離症は仙骨の上にある第5腰椎(L5)に起きることが多く、全体の8割を占めています。2番目に起きやすいのは第4腰椎(L4)です。
◎腰椎分離症が起きやすい性別、スポーツ
腰椎分離症は男子2:女子1の割合で男子がなりやすいです。
野球、柔道、サッカー、体操、ウェイトリフティング、ラグビー、バスケットボール、ハンドボールなど、ジャンプをしたり、腰をひねったり背中をそらす動作を行うスポーツで腰椎分離症が多く見られます。
■腰椎分離症の症状
◎主な症状は腰の違和感、腰痛
腰椎分離症になると、腰の違和感や腰痛を感じることがあります。腰痛は電気が走るような痛みを腰に感じることが多いです。
腰椎分離症の初期は椎弓がひび割れている状態のため(疲労骨折)、症状がないこともあります。
◎「腰椎分離すべり症」になると、足のしびれがでることも
腰椎分離すべり症とは椎弓が完全に折れてしまい、腰椎(椎骨)が前方(お腹側)にずれた状態を指します(ごくまれに後方にずれることもあります)。腰椎分離症から腰椎分離すべり症に移行すると前方にずれた椎骨が脊髄の神経を圧迫し、腰痛や足のしびれが発生することがあります。
腰の痛みに加え、腰椎分離すべり症になるとお尻から太ももの裏側の広い範囲が痛むこともあります。
■腰椎分離症の治療方法
◎保存療法を主に行います
腰椎分離症の治療はコルセットの装着による腰椎の安定など、状態維持を目的とした保存療法を主に行います。
◎リハビリでストレッチ、筋肉を強化
コルセットにより3ヶ月程度、腰椎を安定させた後は理学療法士によるリハビリを行います。リハビリではストレッチで腹筋や背筋(下背部)などの腰周りの筋肉の柔軟性を高めたり、腹筋や下背部の筋肉を強化して腰椎にかかる負担を減らす治療を進めていきます。
◎症状が重く、日常生活やスポーツに支障がでる場合は手術を検討
痛みや足のしびれなど、腰椎分離症の症状が重く、日常生活やスポーツに支障がでる場合は手術を検討します。
手術では分離した椎弓を腰椎に固定します。分離した椎弓と腰椎に偽関節(骨折箇所が偽の関節のようになってしまうこと)ができている場合は偽関節を取り除く必要があるため、手術範囲が広くなります。
腰椎に偽関節がなければ比較的狭い範囲の手術で済むことが多いです。
【腰に違和感や痛みを感じたときは当院までご相談ください】
腰椎分離症は成長期の中高生でスポーツをしているお子さんに多い疾患です。スポーツを通じて日常的に激しい動きをしている方は年齢にかかわらず腰椎分離症を発症することがあります。
腰椎分離症は固定による保存療法やリハビリを行うことで症状の緩和につながります。腰椎分離症になったからと言ってすぐに手術をしなければならない、ということはありません。ただし、腰椎分離症を治療せずに放置していると腰椎が前方にずれて腰椎分離すべり症になり、足のしびれが起きるなど、症状が重くなる場合があります。
「腰に違和感がある」
「腰が痛む」
「足がしびれる」
などの症状がある方は当院までご相談ください。医師が状態を確認し、それぞれの患者様に適した治療方法をご提案いたします。